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きょうこ先生

第10回: 翻訳のイロハ

最近、仕事で翻訳記事の編集に関わることが多くなりました。翻訳者さんの中には、翻訳の学校に通った人、学校には通った経験のない人、それぞれですが、いろんな翻訳者さんを見ていて思うことは、翻訳専門の教育を受けようが受けまいが、センスのある人とない人の差は大きいということです。そこで今回は、私が最近よく担当している「読み物の翻訳」について、大切だと思うことを書いてみようと思います。

私が担当している「読み物」というのは、主にニュース記事やコラムなど、新聞・雑誌でみなさんがよく目にするような記事のことを指すのですが、読み物に限らず最低限必要なのは、基礎的な英語力と読解力。当たり前のことですが、よく中学の期末試験などに登場した「3行目のthatは何を指すのか答えよ」といったような、英語の代名詞の問題が解けないようなレベルでは話になりません。もちろんそのまま直訳で「that=あれ」と翻訳してつじつまが合う場合もありますが、よい翻訳者というものは、代名詞やあいまいな言葉をしっかり解釈し、文脈によって全く違った言葉に置き換えてしまったりするものです。そのあたりが「センス」なんですよね。例えば「The Tokyo-based company announcedtoday…」という文章をそのまま「東京に拠点を置くその会社が本日発表したところによると・・・」とやってもイマイチ日本語としてカッコよくないと思いませんか? そのTokyo-basedcompanyがどの企業を指すのか、必ず前後の文脈からわかるはず。それを読み取り、「キャリアクロス(本社:東京)が本日発表したところによると・・・」と企業名を入れたほうが日本語らしくなるのは一目瞭然だと思います(媒体によってスタイルも違ってくるので、この書き方は一例としてとらえてください)。

「翻訳者たるもの、英語力があって当たり前」という前提をクリアしたところで、英語力と同様に(もしかするとそれ以上に)重要なのが、業界知識などの予備知識です。これは、原文を正確に理解するための助けにもなり、誤訳を防ぐ武器にもなるため、とても重要です。英語力がかなりハイレベルでも、業界知識や予備知識がないためにとんちんかんな訳文を作ってしまう翻訳者さんが時々います。それに業界用語を知らない場合、専門用語がネックになることが多々あります。例えばIT業界ではカタカナのままでいい「プロプライエタリソフトウェア(ProprietarySoftware:マイクロソフトが提供しているような、メーカー独自仕様のソフトウェア)」を、「所有権つきソフトウェア」とやってしまった翻訳者さんもいました。その一語がわからないために、この記事は何がいいたいのかさっぱりわからない、ということにもなりかねません。

さて、英語力と業界知識が揃ったところで、やはり最後は日本語能力でしょう(※今回は英語から日本語への翻訳についてお話ししています)。英語力も業界知識もあるはずなのに、「どうしてこんなフシギな日本語が出てくるの?」と思う翻訳者さんの多いこと。もちろんそういう人たちは、翻訳トライアルを受けてもらった段階で失格となりますが、日本人といえども日本語をしっかり書けない人が多いことに驚かされます。翻訳だからって構えてしまうのでしょうか、その辺はよくわかりません。また、フシギな文章以上に困るのが、つじつまの合わない文章。これは上の2つの条件を満たしていない場合が多いのですが、つじつまの合わない文章をそのままもらってもねぇ・・・その点、ライターさんとして「書く」技術に長けた人は、さすがに翻訳文もキレイなことが多いです。先日も、翻訳経験はあまりないけど業界ライターとしての経験は十分というライターさんに翻訳してもらったところ、とてもきれいな文章で全ての文のつじつまが合っていたので、危うく誤訳を見逃しそうになったほどです。逆に文章のつじつまが合ってないのに誤訳だと気づかない翻訳者さんは、もうちょっと自分の翻訳文を見直してほしいな〜と感じます。

さて、冒頭にも書いたように、これは「読み物」の翻訳についてです。これが契約書やマニュアルなどの翻訳になると、重要事項も違ってきますし、日本語から英語への翻訳となると、求められる英語の能力も違うでしょう。でももし今後、英語から日本語への読み物系翻訳を手がける機会があった時には、このコラムを思い出してもらえるとうれしいです。

きょうこ先生へのおたよりはkyoko@careercross.comまで

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