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第1回 ショージ田淵<フィドラー>

第1話 ショージ田淵<フィドラー>米国ミズーリ州ブランソン在住


 学生時代にブルーグラスというアメリカ音楽にのめり込んでいた青年タブチは、本場のアメリカで腕を試したいという夢を胸に、大学卒業と同時にアメリカに渡った。母から借りたわずか600ドルの資金と愛用のヴァイオリンを片手に横浜港からの旅立ちであった。
 
 「僕がアメリカに行こうと思ったのは、学生時代の全国バンド合戦に優勝するなど、ますますブルーグラスにのめり込んでいた時期に、カント リー・ミュージックの大物フィドラー、ロイ・エーカフの日本公演を聴きに行ったことが直接のきっかけ。ロイの演奏に感激した僕は、コンサートが終わると図 々しくもロイの楽屋を訪ね、彼の演奏に感激したことや彼の大ファンであることを話したのです。そうしたらなんとロイは、「もし君がアメリカに来るようなこ とがあったら、僕を訪ねて来なさい」と言ってくれたのです。たぶん社交辞令か冗談で軽く言ったのでしょうが、当時の僕にとっては正に天の声だったのです。 すっかりその気になった僕は、卒業するとさっそく母だけに相談して日本を飛び出したのです。父は繊維会社の支社長をしていたこともあって、卒業したら僕も サラリーマンになるものと思っていたようですから、結局、父には相談しないままの旅立ちでした。」
 
 ロイ・エーカフの言葉以外なんの手づるもないままに夢を追い求めアメリカに渡った青年は、皿洗いなどのアルバイトをしながら必死で音楽活動を 続けた。やがてコンテストで評価され、彼の奏でるフィドルの評判も次第に知れ渡るようになり、苦節10年の時を経て、いよいよ有名カントリー・バンドの フィドラーとして採用されることになるのである。

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