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Vol.1 “ダメもと”会社訪問
約3年前、オレゴン州に住んでいた私は大学院進学のためにニューヨークに移ることを考えていた。学校見学のために数日間、ニューヨーク旅行の計画を立てていた際、以前から興味を持っていた雑誌の編集部がニューヨークにあることを知る。
ニュー ヨークの出版社がどんな感じなのかも見てみたいし、今後の仕事につながる可能性があるかもしれない――そう思い、雑誌に載っていた発行人のメールアドレス にメールを送ってみた。「御誌に興味があります。○月○日から○月○日までニューヨークに行くので、もしご都合がよろしければ会社を訪問したいのですが、 いかがでしょうか」。
ニューヨーク行きに期待が高まっていたこともあり、「ダメでもともと、とにかく出すだけ出してみよう」という気持ちで送ったのだが、意外にも返事はすぐに来た。「とりあえずニューヨークに着いたら電話をください」。あっさりと、発行人のAさんが面会してくれると言う。
ニュー ヨークに着くと早速、会社に電話してみた。「グランド・セントラル駅にいるんですが、今からそちらに伺ってもいいですか?」「では地下鉄の○番に乗って○ 駅で降りてください。事務所は○ストリート沿いにあります」。初めて地下鉄に乗り、ダウンタウンのある駅で降りる。改札口を出ると、ちょっとうらぶれた雰 囲気が漂っている・・・。住所を探し当て、倉庫を改装した事務所のドアをおそるおそるノックして中に入ると、おしゃれな男性が応対してくれた。雑誌関連 グッズのショップを併設していることもあり、事務所内はポップな雰囲気だ。数分後に現れたAさんも、30代くらいの気さくな感じの男性だった。編集・翻訳 関連のスタッフは今のところ十分だが、「ニューヨークに引っ越して来たら、また連絡してください」とのこと。持参した履歴書を渡して事務所を後にした。
そ れから数カ月後、ニューヨークに引っ越した旨を知らせるなど、時折連絡を取るうちに、日本人スタッフのDさんを紹介された。この時もやはり、今すぐに依頼 できる仕事はないが、今後何かあれば連絡するとのことだった。それからさらに数カ月後、Dさんから仕事の打診があり、日本語の記事を英語に翻訳する仕事を 引き受ける機会があった。
Aさんに会った時もDさんと連絡を取った時も、脈がありそうだという実感はあまりな かった。「何かあれば連絡します」という言葉は、大抵の場合、「あまり期待しないでください」を意味する。それでも連絡を取り続けたことが仕事につながっ た。チャンスというのは地道な行為の積み重ねからも生まれるようだ。
