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インタビュー:竹田 圭吾氏
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プロフィール 竹田 圭吾 氏 『ニューズウィーク日本版』 編集長 |
外資系キャリア講座は、終了致しました。多くの方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。 |
| 1964年生まれ。慶應義塾大学卒。アメリカンフットボール専門誌で、アメリカのプロスポーツの現場取材などを広く手がける。1993年より『ニューズウィーク日本版』編集部に勤務。2001年より同編集長。フジテレビ「とくダネ!」のレギュラーコメンテーターも務める。 | ||

Q 竹田さんは1993年から『ニューズウィーク日本版』にいらっしゃるんですよね。その間、日本は「失われた10年」を乗り越え、小泉内閣の改革を経験してきました。景気はようやく回復してきたと言われますが、竹田さんが『ニューズウィーク日本版』で過ごされてきた10年余りで、経済的・社会的な構造はずいぶん変わりました。こうした変化の中で、企業が求める人材はどう変わったのでしょう?
A 人材の話をする前に、まず1990年代以降の世界の流れを見てみましょう。90年代以降の流れを一言で言うと、やはり「グローバル化」ということになるでしょう。これは簡単に言えば「人、もの、金、サービス、情報の流れが国境を超える」ということですが、グローバル化はそれ以前の流れであった「国際化」とは、根本的に性質が違います。「国際化」とは国と国との関わりが広がったり、深まったりすることを指し、この場合は国境自体がなくなるわけではありません。これに対しグローバル化は、モノ、情報などの流れにおいて、今まで地図の中にあった「国境」そのものがなくなっていく現象です。
国際化からグローバル化への変化を引き起こした直接的な引き金は、冷戦の終焉です。戦後の国際体制、つまりイデオロギーで分断されていた東と西という世界の枠組みが消えたことで、それぞれにとって市場は2倍になり、それまで東側といわれていた国々の経済・政治の仕組みも西側に近づいてきた。
イデオロギーで世界が分断されていた頃には、一般に「こうした枠組みがなくなるのはよいことだ」と思われてきました。しかし現実は、民族問題や宗教問題など、ある意味では冷戦の時以上に難しい問題も起きてきています。つまり、イデオロギーの違いに隠されていた部分が、新しい問題として浮き上がってきたわけです。
Q そうした世界情勢の変化の中で、日本はどう変わっているのですか?
A 日本という枠組みの中で80年代以前と90年代以降を区切ると、今言った冷戦の終結に加え、バブル経済の崩壊、そしてインターネットの普及という3つの要素が挙げられます。その3つがたまたまほぼ重なって起きたため、日本の社会はそれ以降、それ以前の何十年にも匹敵する変化を経験することになりました。
企業人、社会人の新しいDNAとしてダイバーシティを組み込んでいく

Q そうした変化と、求められる人材の変化にはどんな関係があるのでしょうか?
A 環境要因があまりにも変わったから、当然、働き方や生き方も変わらなければいけません。そんな中で何が求められるかというと、一番大切なのはダイバーシティを身に付けているかどうか、ということだと思います。これは、ビジネスに限ったことではなく、企業人、社会人としての新しいDNAにダイバーシティを組み込んでいくかどうか、という問題です。
ダイバーシティという言葉は、日本語では「多様性」と訳されますが、たとえばアメリカ人やヨーロッパ人にとってのダイバーシティと日本人にとってのダイバーシティでは意味が違っています。日本はたまたま地理的に島国で、多民族ではない国家。これに対し、ヨーロッパには何千年にも渡り複数の民族が混在し、民族紛争が続けられてきた土地柄がある。一方、アメリカは移民国家で、多民族がひとつの国家の形を取っている。
考えようによっては、日本人にはハンディキャップがあるわけです。アメリカ人ように、生まれた時からダイバーシティを身をもって体験しているわけではありませんからね。肌の色、人種、言葉、宗教の違いの中で生きている人たちと比べると、どうしても感覚が薄い。
では、グローバル社会でなぜダイバーシティが必要かというと、たとえばビジネスひとつをとっても、言語、ジェンダー、民族、人種、宗教などいろいろな組み合わせがあり、それに合わせたビジネスの仕方、ネゴシエーションの仕方がある。人も、金も、サービスも情報も、自由に行き来するようになったわけですから、当然いままでと同じ仕事のやり方では通用しません。ですから、「キャリアアップを考えるなら、まずダイバーシティ に強い人になって下さい」と。
グローバル化していく世界ではローカリズムも大事になってくる

Q しかし、ダイバーシティと言われても、とりあえず語学を磨くとか、そういう問題では済まされませんよね。どこから始めればいいか戸惑ってしまう人も多いと思うのですが。
A ダイバーシティはある意味、心構え、気構えの問題です。これに対し、言葉はスキル、ツールに過ぎません。日系ブラジル人の多い街に行けば、みんな片言でポルトガル語を話しますよ。そうしなければならない必要性があるから。必要とやる気さえあれば、語学は後から着いてきます。僕の言うダイバーシティは相手の置かれた社会的な状況や立場に立って考えるということで、それは海外に行かなくても始められるのではないでしょうか? 実際、語学ができても自然にコミュニケーションをするのが難しい、という日本人がまだほとんどで、外国人という言葉からいまだにアングロサクソンをイメージする人が多いのが現状です。これでは、語学ができてもダイバーシティが身に付いているとは言えません。
Q 『ニューズウィーク日本版』は、世界のニュースを日本に持ってくるお仕事ですから、竹田さん自身、世界のニュースを隈なく見てきていらしたと思います。90年代以降、「世界が見る日本」はどう変わってきたのでしょう?
A 一般に「日本はどうして変わらないのか?」というのが世界の見方で、こうした見方のうち8割は、なかなか変わらない日本にいらだっています。グローバル化にうまく適応していないのではないか、というのがその理由です。2001年までの日本に対しては「これだけ世界経済の枠組みが変わっているのに、日本は55年体制、古いシステムを引きずったままだ」という批判が強くありました。小泉前首相が世界に評価されたのは、彼が外国からみて非常に分かりやすい改革をしてきたからです。5年前と今を比べたら、日本のイメージも、若干変わってきていると僕は思います。
一方、残りの2割は日本は変わらなくてもいいんじゃないか、という意見を持っています。これはおそらくダイバーシティにも関係してきているのでしょうが、グローバル化になればなるほど、ローカリズムが大事になってくるんです。
これは個人についても言えることで、「あなたはどんなバックグラウンドを持っているのですか?」「あなたのルーツはどこにありますか?」と問われたときに、自分の根っことなる部分を持っていないと、どんどんグローバル化していく世界の中で単に浮いている存在になってしまいます。
Q 一方では、ダイバーシティを身に付けながら、ルーツを失わない、ということですか?
A そうですね。それから意見を提案する時、「日本はこうだから、こういう原則でやります」とか、「現地はこうだから、こう現地でやります」ではなく、状況に合わせてベストなことを提案できる力が問われます。
Q つまりフレキシビリティ、柔軟性ということですね?
A ひとつに状況に柔軟であることはもちろんのこと、さまざまな要素の組み合わせにそれを応用できる力ですね。グローバル化された世界では、気候、風土、文化、風俗、ジェンダー、宗教など、ひとつのプロジェクトを進めるだけでも、たくさんの要素を考慮しなければなりません。それぞれの状況で、プライオリティは何か、どの要素を重視すればいいかを瞬時に判断する能力が必要です。
ダイバーシティへの第一歩は経験から知識を蓄積すること

Q 竹田さん自身は、『ニューズウィーク日本版』に入られて、海外とのコミュニケーションや外国人の同僚とのやり取りの中で、注意なさっている点はありますか?
A 僕個人の例というわけではありませんが、たとえばイギリス人の同僚が5人いるとします。多くの人は、最初は「イギリス人だから気質もたぶん似ているだろう」という括りで付き合っていこうとするでしょう。しかし、現実には日本人とイギリス人の間の歪みより、イギリス人同士で衝突する場合が多いかもしれません。最初は階級社会、出身地の違いで、イギリス人同士にも軋みが起こり得るとは知らないので、びっくりするわけです。
具体的なスキルをあげればキリがないですが、まずは経験から知識を蓄積していかないと。たとえば、politically correctness(ポリティカリー・コレクトネス=政治的な正しさ)ひとつをとってみても、それぞれの文化的な背景を把握するのは非常に難しい。どこまでジョークが許されて、どこまで会話で使っていいのかは、経験していかないと分かりません。
外国人上司や同僚とのコミュニケーションに関しては「ニューズウィーク日本版」でも何度か特集を組みました。その際いつも問題になるのは、「どこまではっきり言うべきか」という部分ですね。しかし、専門家に聞くと、北欧とか東欧とか、ヨーロッパひとつをとってみてもコミュニケーションのパターンはかなり異なっていると言うし、どういう上司に当たるかによっても状況が変わってくるでしょう。ですから、ここであえてひとつだけ挙げるとすれば、フレキシビリティを持つこと、そして先入観を持たないということです。日本人らしさ、中国人らしさ、というのは、概念としてあると思います。しかし、付き合っていくうちに、この人はこんなタイプなのか、という発見があるはずです。要は先入観を捨てて、状況に合わせた対応をしていくことではないかと思います。
語学よりまずやりたいことを見つける!

Q ところで、竹田さんは『ニューズウィーク日本版』に来る前は、スポーツ雑誌の記者をなさっていたんですよね。英語の勉強はどこでなされたんですか?
A アメリカという国は以前から好きで、スポーツだけではなく文化とか、政治も含め、非常に興味を持っていました。でも、特別に英語を勉強をしたわけではありません。前の職場ではスポーツの取材で、毎年何回かアメリカに出張しましたし、行って仕事をするからには、それなりの語学力は必要でした。しかし、当時はスポーツの取材ができればいいというレベルだったと思います。 『ニューズウィーク日本版』に転職したのは、前の仕事は月刊誌だったので、刊行サイクルの違う媒体をやってみたいという気持ちと、アメリカが好きという気持ちからです。英語ができるから転職したのではなく、こういう仕事をしているからある程度英語が使えるようになったわけです。 英語の仕事をしたいとおっしゃる人は、仕事でも生活でも、英語を使わざるを得ない状況に自分を持っていくのが一番いい。個人的にはそれ以外の方法はないと思います。英語は仕事に必要なツールであり、目的もないまま勉強しても意味がありません。だから、まず、やりたいことを先に見つけてください、と。
多くの方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。
