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第30回: 英語の発音 ウマイ・ヘタ
執筆者: きょうこ先生
場所: 東京
掲載日: 2006-11-29
日本人は英語の発音がうまくできない、とはよく言われることですし、発音が苦手だと自覚している人も多いと思います。「R」と「L」の使い分けがどうもねぇ、「TH」で舌をかむなんてねぇ、等々古典的な悩みもよく耳にしますが、実際のところ「日本人っぽい発音」が一番顕著なのは母音です。「R」や「L」や「TH」の発音なんかより、母音の方が登場頻度はずっと高いのですから、母音を制すれば英語の発音の80%は制したと言っていいかもしれません。
みなさんご存知のように、日本語には「あ」「い」「う」「え」「お」の5つしか母音がありません。一方の英語は、例えば日本語で「あ」と置き換えられがちな母音だけでも数種類存在します。ここではアメリカ英語を前提とした話をしますが、例えば「Bank」「But」「Bar」という単語に出てくる母音も全部種類が違います。「Bank」で使われる母音は、昔よく英語の先生が言っていた「あ」と「え」の中間のような音、「But」の母音は、あいまい母音といって、その音だけ聞くと日本人には「あ」だか「う」だか何だかよくわからないような音、そして「Bar」の母音は、日本語の「あ」に一番近くて、「あ」を少しはっきり発音したような音です。「あ」だけじゃありません。日本人にとっては「い」「う」「え」「お」としか聞こえないような音も、英語にはそれぞれ数種類存在するのです。これをちゃんと使い分けることができれば、英語の発音はかなり英語らしく聞こえますし、発音はできなくとも違いをちゃんと聞き分けられれば、音だけで単語のつづりがかなり正確にわかることも多くなります。
ただし、注意してほしいこともあります。「あいまいな母音を使えば英語っぽく聞こえるのよね」と勘違いして、日本語らしくない母音を乱用しないでほしいのです。日本語の「あ」しか発音しかできない人は、「Bank」も「But」も「Bar」もすべて「あ」と発音しますが、むしろその方が問題は小さいと思うのです。こうしたケースでは、英語のNative Speakerは「この人はこの3つの音を『あ』という音に集約しているんだな」と無意識にルール化して聞いてくれるからです。それが、何のルールもなく数種類のあいまい母音をさまざまな単語の中にちらばめていると、どの母音を意図して発音しているのかわからなくなる恐れがあります。実際には多少発音が不規則でも文脈で単語が判断できるため、ミスコミュニケーションまでは起こらないと思いますが、そういう英語を話している人を見ると「まだ日本語英語っぽい発音のほうがいいなぁ」なんて思ってしまいます。
先日国内出張で全日空を利用した際、客室乗務員のアナウンスで久しぶりに「むりやり英語っぽい発音をちりばめている英語」に遭遇しました。母音に英語らしい発音をふんだんに取り入れようとしているのですが、それが正しく使われていないのです。また、彼女の「L」の発音はすべて「R」になっていました。この件に関しては「L」&「R」→「R」というルールが成り立っているのでまだいいのですが、「むしろ『L』の時には日本語の『ら』行の発音をした方がいいのになぁ」と思ってしまいました。だってね。日本語の「ら」行を発音してみてください。舌が口の上部に触れていますよね。「L」も、「ら」行とは舌の位置が若干違いますが、口の上部に舌が触れます。逆に「R」は舌が口の上部に触れることはありません。その客室乗務員は、日本人にとっては発音しにくい、でも英語っぽく聞こえる「舌を口の上部に触れさせない発音」を「R」と「L」の両方に適用していたのです。
そしてその客室乗務員の発音では、「Please make sure your seat belt is securely fastened」(シートベルトを「しっかり」しめてください)というアナウンスが、何度聞いても「scary fastened」(「オソロシイ」しめてください)にしか聞こえなかったのでした。そう、むりやりあいまいすぎる母音を使ったため「securely」の最初の母音がほとんど聞こえなかったのと、最後の「L」が完全に「R」となっていたためです。
ずっと「日本語英語よりヒドイ発音だなー」と思ってアナウンスを聞いていたのですが、最後に「scary fastened」でちょっと笑わせてくれたので、その他の発音は聞かなかったことにしておきましょう。
