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ツォツィ
執筆者: 三田法子
掲載日: 2007-04-09
アパルトヘイト後の知られざる
南アフリカの過酷な現状
2006年アカデミー賞外国語映画賞受賞をはじめ各国で映画賞を受賞した「ツォツィ」。監督の南アフリカのヨハネブルクの出身のギャヴィン・フットは、国の現状を見ながら「寛容とセカンドチャンスへの小さな希望を見出したかった。今の南アフリカが、様々な問題を抱える中で、希望を抱いているように」と語る。彼の言葉にあるように、「ツォツィ」は、どんなに過酷な状況下でも、次につながる希望を見出すことの大切さを教えてくれる。
南アフリカ、ヨハネブルグにある貧しいスラム街、ソウェト。そこに暮らす主人公ツォツィ(タウンシップのスラングでギャングの意味)は、仲間4人とギャンブル、窃盗、暴力を繰り返す日々を送っていた。
ある日、ツォツィは、痴話喧嘩から仲間の一人を殴り飛ばし、瀕死の状態に陥らせてしまう。居場所を失ったまま、フラフラと富裕層居住区へ迷い込む。そこで黒人女性の運転する高級車を強奪するのだが、なんと後部座席には生後まもない赤ん坊が乗っていた。車内の金品をかき集め、車を放置し立ち去ろうとするも、泣き止まない赤ん坊。見かねた彼は、しかたなく赤ん坊を紙袋に入れ持ち帰る。しかし、ツォツィに赤ん坊の世話など出来るはずもなく、新聞紙をオムツ代わりに、コンデンスミルクを赤ん坊の口に流し込むなど悪戦苦闘を繰り返す。泣き止まない赤ん坊に途方に暮れていた時、同じぐらいの赤ん坊を持つ女性ミリアムを町で見かける。なんとか母乳を分けてもらおうと、彼女の後を追い、家を突き止めるツォツィ。赤ん坊との生活、そして赤ん坊を通して知り合ったミリアムとの関係が、封印していた彼の記憶を呼び覚まし、冷たく凍りついた心を徐々に解かし始めていく……。
ツォツィらが暮らす黒人居住区(タウンシップ)は、アパルトヘイト当時、強制移住で作られた地区。高層ビルが立ち並ぶ都市部に隣接しているのに、舗装されずに埃立つ道路、そこに立ち並ぶ貧しい家屋、しかも水道すら通っていない貧しい町だ。作品からはアパルトヘイトが廃止されて十余年経つ今でもその傷跡は深く、想像を超える格差が生まれている様子がうかがえる。更に驚くべきことは、今や彼らストリートチルドレンたちのターゲットは白人ではなく、同じ黒人の富裕層に向けられているという事実。
子供は生まれる環境を選べない。もし貧困家庭、荒廃した環境に生まれてしまったら、そこから抜け出すことは不可能なのか。誰からも愛されず、世の中を憎み、暴力と隣り合わせで生活する主人公を通して、映画「ツォツィ」は私たちに訴える。
作品で描かれる残虐な暴力に正直、目を覆いたくなるシーンも多い。一方で、十分な教育も受けられず、誰からも愛情を注がれることのなかった彼らにとって、自分以外は全て憎むべき存在であり、暴力で勝ち取る術しかしらない現実が、よりリアルに浮かび上がる。
日本からは遠い国、南アフリカのあまり知ることの出来なかった実情を切り取った貴重な作品だ。
公式サイト http://www.tsotsi-movie.com/
タイトル:『ツォツィ』
配給;日活、インターフィルム
4/14よりTOHO シネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
