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第28回 : Japan-US FTA
執筆者: 正木寿根
掲載日: 2007-05-10
今回のキー表現 dry run
A dry run for a Japan-US FTA
By Hisane MasakiTOKYO - Japan has kicked off negotiations with Australia on concluding a free-trade agreement (FTA), in a desperate bid to play catch-up in the ever-intensifying regional and global FTA race. The negotiations with Australia, launched this week, are particularly significant because they are Japan's first with a major agricultural exporter and are widely seen as a dry run for possible future talks with the United States.
(Asia Times April 27, 2007)
*引用文は原文と一部異なることもあります
- dry run 予行演習、模擬演習、リハーサル
- FTA (= free-trade agreement) 自由貿易協定
- kick off キックオフする、開始する
- negotiations 交渉
- conclude (条約・契約などを)結ぶ
- desperate 絶望的な; 死物狂いの
- in a bid to ~することを目指して、~するために
- play catch-up 巻返しを図る、スピードをあげて遅れを取り戻す
- ever-intensifying さらに激化する、激化し続ける
- launch 打ち上げる、始める
- particularly とくに、とりわけ
- significant 意義深い、重要な、意味のある
和訳
自由貿易協定(FTA)競争が地域・世界的にますます激しくなる中、遅れを取り戻そうと必死の日本は今週、豪州とFTA交渉を始めた。日豪FTA交渉はとくに重要な意味がある。というのは、日本にとって主要農産物輸出国とは初めての交渉であり、将来可能性のある日米FTA交渉の「予行演習」と広く見られているからだ。覚えておきたい関連・応用表現
- trade protectionism 保護貿易主義
- net food-importing country 純食料輸入国
- food security 食料安全保障
- trading partner 貿易相手国
- multilateral free trade 多角的自由貿易
- the General Agreement on Tariffs and Trade (= GATT) ガット、関税と貿易に関する一般協定
- the World Trade Organization (= WTO) WTO,世界貿易機関
- export market 輸出市場
- import tariffs 輸入関税[率]
- the North American Free Trade Agreement (= NAFTA) NAFTA、北米自由貿易協定
- the Doha Round ドーハ・ラウンド
- market opening 市場開放
- elimination of tariff measures 関税措置の撤廃
- liberalization of investment and services trade 投資・サービス貿易の自由化
- harmonization of competition and other policies 競争・その他政策のハーモナイゼーション[調和]
解説

日本はこれまでにシンガポール、メキシコ、マレーシア、フィリピン、チリ、タイの6か国とEPAを締結、シンガポール、メキシコ、マレーシアとのEPAは既に発効している。また、インドネシア、ブルネイとのEPA交渉も基本合意に達している他、アセアン(東南アジア諸国連合)全体、ベトナム、インド、湾岸協力会議(GCC)などとも交渉中だ。一方、韓国とのEPA交渉は、日本の農林水産品市場の自由化提案では不十分とする韓国政府の反発で2004年末以降中断したままだ。日豪EPAについては、2005年4月の日豪首脳会談で、EPAの実現可能性、メリット・デメリットを含めた政府間共同研究を開始することに合意、2006年12月には共同研究の最終報告書が提出され、同月、両国首脳の電話会談で2007年の交渉開始が合意された。今年3月中旬に訪日したハワード首相と安倍首相との間で行われた日豪首脳会談では、EPA交渉を精力的に行って早期合意を目指す方針を確認した。
WTO(世界貿易機関)のルールでは、FTAは締結国・地域間のsubstantially all trade 「実質的にすべての貿易」を対象としなければならない。自由化の例外品目をあまり多くつくると批判を招く恐れが強い。日豪EPAが締結されれば関税撤廃や規制緩和を通じて貿易・投資の一層の拡大が期待できる。また、各国・地域とのEPA交渉に積極的な外務省と経済産業省は、日豪EPAのメリットとして資源・エネルギーの安定的供給を挙げるとともに、世界中で資源権益確保に走る中国と豪州とのFTA交渉にも注意を向けている。日本は豪州にとって中国、米国を上回る最大の貿易相手国。豪州は資源が豊富で、石炭、鉄鉱石、石油・天然ガスの輸出が対日輸出の6割近くを占めている。また、ウラン埋蔵量は世界1位で、原子力政策を推進する日本にとっては重要なパートナーだ。
しかし、日本が農産物輸出大国とEPA交渉を行うのは初めてであり、豪州側は日本が守ってきた牛肉などの主要農産品の関税撤廃を求めると見られ、交渉は難航が予想されている。農林水産省は日豪EPA締結で豪州産農産物の関税が撤廃された場合の影響として、主な輸入品目である小麦、砂糖、乳製品、牛肉の輸入が大幅に拡大する可能性があり、国内生産が約8000億円減少すると試算している。自民党農林族議員からは、「日本農業に壊滅的な打撃があることがはっきりしているのに、それでも進めるメリットがあるのか」といった声が相次いでいる。農林族議員らは日本政府に対して、コメとこれら4品目を日豪EPAの対象から除外するよう求めている。最近は自民党離れも起きているが、農業団体・農家は自民党にとって伝統的な支持基盤(traditional support base)。当初は3月中にも開催されると見られていた日豪EPA交渉第1回会合開催が4月22日の統一地方選挙第2ラウンド終了直後に設定されたのも、こうした日本側の政治状況への配慮からだ。また、同じ理由から、第2回会合は7月の参議院選挙後に東京で開催される予定だ。
日本は世界のFTA競争では長いことtest the waters 「瀬踏みする、成り行きを見守る」の姿勢を取ったためjump on the bandwagon「時流に乗る」のに遅れ、slow starter「スロースターター、エンジンのかかるのが遅い人、事を始めるのが遅い人、出だしの遅い人」となってしまった。果たしてplay catch-up「遅れを取り戻す」ことができるかどうか注目されている。日本のFTA戦略にとって農業が依然としてアキレス腱だが、農業大国である豪州との交渉がまとまれば一気にturn the tables「形勢を逆転させる」道が開けそうだ。
