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第34回: 語学習得の山 その2
執筆者: きょうこ先生
場所: 東京
掲載日: 2007-05-22
語学習得の山 その2 - 木をノックするとどうなるの?
前回のコラムで、これまでの私の英語学習歴でぶちあたった山をいくつか紹介しました。いくつもの山を乗り越えて英語の先生にもなれた私ですが、それでも山にぶちあたることがあるというのも前回のコラムのとおりです。
いつになっても私の前に立ちはばかる山とは、単語や慣用句なんですが、その中で、初めて耳にしてから何年も経った今でも「私、この言葉は自分で使いこなせないなぁ」と感じる表現があるので、今回はそのお話しを紹介したいと思います。
あの言葉を初めて聞いたのは、アメリカの会社に勤めていた時でした。社内で風邪が大流行し、みんな次々と倒れていく中で、同僚のカレンと話していた時のこと。「みんな順番に倒れちゃったわね。きょうこは大丈夫?」「私は平気。カレンは?」「今のところ大丈夫みたい。でも I just have to keep knocking on wood.」--- 聞いたことのない表現でしたが、あとで辞書で調べようと思って、その場で同僚に意味を聞くことはしませんでした。
自分の席に戻って「knock on wood」の意味を調べた私ですが、どうもしっくりきません。「いやな目にあいませんように」「くわばらくわばら」という訳語がたぶん一番合うのだろうけれど、I have to keep knocking on woodという言い方だと、自分(I)が何かを自主的にやり続ける(keep ~ing)という表現なのに、「いやな目にあいませんように」というのはあまりにも「神のみぞ知る」的な漠然とした雰囲気で、先ほどの会話も頭の中でうまく翻訳できませんでした。ただ、カレンは自分が風邪をひかないよう願っているんだ、ということだけは理解できました。
その後も私は何度かこの表現に出くわすことがありました。しかも、表現だけじゃなく、言葉には出さずともそばにある木(の机など)を実際ノックする場面にも出くわしました。その都度、何度も頭の中でこの表現を理解しようと努力した結果、それはすべて話し手が自分に起こってほしくない悪いことを言った時に出てくる表現だという結論に達したのです。
この表現が生まれた歴史的背景はわかりませんが、前回取り上げた「くしゃみをすると魂が抜けてしまうからBless you!」という考えと同じで、もしかすると「木」と「厄よけ」に何らかの結びつきがあり、それが一般的な表現として浸透していったのかもしれません。
そういえば、日本でもイヤな来客があったあと、「塩まいとけ!」なんて言うことがありましたね。塩は清めの力があるとされ、お葬式の後にも塩をまくといった習慣などから転じて、イヤな客に対するイヤミの表現として「塩まいとけ!」となるわけですが、この表現も、私が「knock on wood」を理解するのに苦しんだように、外国語として日本語を学ぶ外国人にとって理解に苦しむ言葉なのかもしれません。
