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シッコ SiCKO
執筆者: zai
掲載日: 2007-08-21
Dead or money? 明日なきアメリカの医療現場は日本の未来か?
マイケル・ムーア監督最新作「シッコ SiCKO」がついに公開!
男性がケガをしたヒザを自分の手で縫っている、痛々しいシーンからから映画は始まる。もちろん彼は医者でも何でもない。ただ、“医療費が高いから”という理由だけで、手縫いなのだ……。
マイケル・ムーア監督3年ぶりの新作「シッコ SiCKO」は、そうしたアメリカの医療の現場で起きている、治療をしない医療現場の実態をいくつも見せてくれる。
アメリカにはいわゆる国民全員に義務付けられているような健康保険制度がない。民間保険会社を通して運営されているHMO(Health Maintenance Organization)は、利益優先のため、医療審査で10%は拒否することが当たり前のようになっている。例え、どんな重病であっても、治療の必要なしと承認されれば、保険料を払わずに済むからだ。HMOに加入していても。保険を適用されず、家を売ったりするハメになることも多い。また、メディケアという低所得者向けの健康保険制度は、加入審査が厳しい。そのため、無保険者が5000万人近くいるという。最近では、病院がお金の払えなくなった患者を、ホームレス向けの施設近くに放り出すということが起こっているという事実。
こうしたアメリカの医療制度に対し、ムーアお得意の突撃ジャーナリズムが活躍するのは映画の後半からだ。カナダやイギリス、フランスの医療現場を訪れ、人道的な医療の現場を目にする。さらには、9.11の時のアルカイダメンバーが収容されている基地があるキューバへも出向く。9.11の消防士や救命士として活躍し、その影響で肺などをやられたメンバーたちを引き連れて。アルカイダメンバーには、最高の医療保証がされているのに対し、9.11の英雄だったはずの消防士や救命士には、医療保険を適用されなかったり、高額医療に悩んでいたりしている。ムーアは、そんな矛盾に切り込んでいく。彼らと同等の医療を消防士たちにも受けさせろと。その願いは叶わなかったが、キューバで見た予想外の現実が、「シッコ SiCKO」のクライマックスにつながっていく。
今までのムーア作品と言えば、アンチ・ブッシュ、アンチ・共和党を前面に押し出し、敵と対峙することで映画を盛り上げていったが、今回はそうではない。人が生きるとい根本的なテーマを、アメリカの医療保険制度の矛盾を通して、うまくまとめあげている。同時に、アメリカの行き過ぎた民主主義のあり方に対して、警鐘を鳴らすということも忘れていない。 アメリカ的な利益優先主義をなし崩し的に受け入れつつある今の日本にも、この映画はいい教訓となるだろう。もちろん、ムーア流のユーモアも随所に生きている。ラストに流れるフランス語バージョンの「明日なき世界」は、最高に皮肉が効いていた。
8月25日(土) 渋谷シネマGAGA!
日比谷シャンシネ 新宿ジョイシネマ シネ・リーブル池袋で公開
「シッコ SiCKO」の詳しい情報はこちら http://sicko.gyao.jp/
