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Vol.5 夢か幻か? 精肉工場街での不思議な面接
ニューヨークのミートパッキング・エリアといえば、その名の通り、もともとは精肉工場が立ち並ぶエリアだったが、最近では再開発されてギャラリーやショップが増え、おしゃれなエリアに変わってきている。そんな場所へ面接に行くことになった。ソフトウェアを開発している会社で、オフィスはギャラリーの中に構えているという。
古いビルのドアを開けると、コンクリ打ちっぱなしのがらんとした部屋が現れた。大きな絵が数枚、無造作に飾られている。奥の部屋から、ちょっと気の弱そうな感じのお兄さんが出てきた。名前を言って面接に来たことを告げると、お兄さんは「えーっと、受付の仕事に応募していたんだっけ?」と、か細い声で聞いてきた。「いや、編集関係の仕事の件で連絡があったのでこちらに来たんですが・・・」と答えると、「ああ! そうだったね」と、思い出したような表情をした。大丈夫なんだろうか?
持参した履歴書をお兄さんに渡すと、その場で立ったまま見始めた。お兄さんの話によると、開発しているソフトウェアを日本にPRするため、日本語で原稿が書けて日本のメディアでの職歴がある人を探しているので、私の経歴はちょうど当てはまっているという。まだ立ち上げたばかりの会社なので、まずは週3日くらいのアルバイトで始めてほしいとのこと。結局、玄関のドア付近で二人とも立ったまま、15分ほどで面接は終了した。
面接が終わると、お兄さんは「あ、じゃあ仕事場を案内しますね」と言って、奥の部屋に連れて行ってくれた。「引っ越したばかりで、まだ散らかっているけれど・・・」と言うお兄さんの後に続いて中に入る。室内にはコンピューターが2台あり、棚には紙や事務用品が無造作に置かれていて雑然としているが、ニューヨークの起業家のオフィスという感じもする。仕事をしていたもう1人のお兄さんに紹介され、挨拶した。このお兄さんも、やはり線の細いタイプだ。
仕事場から出てくると、「いつから始められる? 詳しいことは来週、もう一度連絡するから」と言われ、ギャラリーを後にした。だが、次の週になっても連絡が来ない。いかにもニューヨーク的なギャラリーにあるオフィス、立ちっぱなしの面接、ちょっと浮世離れした感じのお兄さんたち・・・。もしかしたらあの数十分は夢だったのか? まるでキツネにつままれたような出来事だった。
