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NY砂漠を行く

Vol.6 銀行での出会いから生まれたビジネスの話

きっかけは近所の銀行の窓口だった。私は口座に預金するために持参した日本円を窓口のお兄さんに渡した。お兄さんがドルに換算して示した数字を見て みると、1桁少ない! 私が「計算が間違っていますよ」と言うと、お兄さんは首をかしげて計算し直したが、間違っていないと言う。「これがうちのレートだ よ」と主張するばかりで、一向に話が通じない。出直そうと思い、現金を受け取って帰ろうとすると「大丈夫ですか?」と、日本語で声をかけられた。振り返る と、女性と目が合った。事情を話すと、彼女は自分の窓口担当者に掛け合ってくれた。

手続きを待っている間、お互いに自己紹介を始める。イラン出身のFさんは弁護士で、日本人のご主人は駐在員。ご主人と結婚してから日本に住んでいた こともあり、日本との付き合いは20年以上になるという。流暢な日本語を話しているが、もっと日本語を勉強して、日本と関わりのある仕事も手がけたいのだ という。私が雑誌や新聞の編集の経験があると話すと、日本人向けに法律に関する記事を書いてみたいという彼女はとても興味を示した。そして、私の両替手続 きが終わると、彼女は名刺を差し出し、近いうちに是非会いましょうと言って別れた。

数日後、メールを送ってみると、早速、夕食を一緒に食べようとのお誘いが来た。彼女の自宅に招かれて夕食をごちそうになりながら、お互いのこれまで の生活や仕事などの話で盛り上がる。日本語の法律文書などをすらすらと読めるようになりたいと話す彼女は、私に日本語のレッスンをしてほしいという。私に とっても勉強になる話だし、是非やりたいと答えて、すぐに話は決まった。レッスン日には、彼女の家で一緒に夕食を食べることにもなり、思いがけない展開に なった。

レッスンの内容は、彼女自身が見つけた日本語の記事を一緒に読んでいきながら、分からない箇所を私が説明するというもの。熟語や法律用語が出てくる と、「あれ? なんて説明すればいいんだっけ?」と戸惑うこともあり、私にとっても勉強になる。「弁護士と日本人のライターという組み合わせで、仕事がで きればいいね。こうしてお互いがそれぞれに必要な力を付けていけば、できるよ」。レッスンと夕食を重ねるうちに、そんな話をするようになっていった。これ から先、どんな風に発展していくのか、楽しみなプロジェクトだ。

彼女と出会ったきっかけは、銀行でのトラブルだった。思いがけないところから生まれた縁。そんな意外性と可能性を秘めたところが、ニューヨークの魅力かもしれない。

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